動物関連ニュース'09(13)

毎日新聞(2009年12月15日(火)より

どうぶつナビ:劣悪な環境でたくさんの動物を飼う人たちがいます。

 ◆劣悪な環境でたくさんの動物を飼う人たちがいます。

 ◇世話せず、繁殖も放置 1人暮らし「寂しくて」、福祉・精神面で支援必要

 神奈川県西部の住宅街。12月初旬、ごみだらけになった一軒の家の庭で、
鎖につながれた2匹の犬が雨に打たれて鳴いていた。

 近所の女性によると、数週間前から飼い主の姿が見えず、家の中からも犬の鳴き声がしているという。
女性は「心配で眠れない」と、敷地外の道路から水やえさを差し入れている。
保健所に通報したが、改善される様子はない。

 動物愛護管理法では、ペットなどの動物にみだりにえさや水を与えずに
衰弱させるなどの虐待をした者には50万円以下の罰金刑が定められている。
虐待にはケガや病気の治療をせずに放置するといったネグレクトも含む。
また、都道府県知事は多頭飼育(多数の動物を飼うこと)で周辺の生活環境が
損なわれていると認められた場合、飼い主に改善を勧告することもできる。

 だが、劣悪な環境で動物を飼ったり、医療が必要なのに何のケアもせず飼育する
個人、団体、業者は多い。行政の対応も自治体によってばらつきがある。

    *

 財団法人・神奈川県動物愛護協会(横浜市港北区)は今年6月から
住宅地のアパートに入り、犬たちの救出活動を続けている。

 「ものすごい数の犬がいる」との通報を受けて駆けつけると、
2DKのアパートで1人暮らしする女性(62)が純血犬種シーズーを65匹も飼育していた。
強い臭気と鳴き声の中、女性が「犬がいないとさみしい」と訴える。
スタッフは「このままではもっと増えてしまう」と粘り強く説得し、訪問のたびに同意をとりつけて保護。
これまで48匹に不妊・去勢手術を施した。

 狭い室内でのストレスなどで犬たちはケンカが絶えず、ケガをしている。
不妊・去勢手術をしなかったため近親間で繁殖を重ね、障害のある犬も多い。
会長の山田佐代子さんは「もっと早く気づいていれば、ここまでひどくならなかった。
多頭飼育は以前からある問題だが、地域のつながりが希薄になった結果、
発覚が遅れているように思う」と話す。
特に1人暮らしの中高年が寂しさから犬猫を飼い次々と子を産ませてしまうケースが目立つという。

 同協会は女性から引き取った犬たちの新しい飼い主を探している=「家族になって!」の欄参照。

    *

 10年ほど前、山梨県都留市の山奥で不動産業の男性が400匹以上の犬を飼って近隣トラブルとなり、
マスコミでも報道された。その後飼い主は亡くなり、今は知人だった小林昭夫さん(67)らが
まだ残る80匹を住み込みで世話している。
週末には帝京科学大学(山梨県上野原市)の学生や社会人のボランティアも来る。

 小林さんによると、飼い主は知人に引き取ってほしいと頼まれた犬を集めており、
「保護活動のつもりだったようだ」という。だがほとんど世話せず、ケンカや繁殖も放置していた。
新しい飼い主探しを続けているが「犬たちも高齢になり譲渡希望者が見つかりにくい。
継続して援助してくれる人も限られている」と無力感を口にする。

 同大准教授で精神科医の横山章光さんは「米国では医療関係者などによる研究で、
多頭飼育の50例以上を崩壊、保護、搾取型の三つに分類し、解決策を示している。
精神疾患との関係性も指摘されている」と話す。

 これまで20件以上の多頭飼育問題にかかわってきた奈良市保健所の獣医師、泉幸宏さんは
「動物を保護しても、多頭飼育を繰り返す飼い主が多い」と指摘する。
飼い主の元に何度も足を運んで話を聞くうちに、何らかの喪失体験を持った人が多いことに気づいたという。
「動物愛護の観点からだけでは根本的な解決にならない。
福祉や心理学の専門家チームも含めた社会学的な調査、検証が必要な時期に来ている」と訴える。
【田後真里】

毎日新聞 2009年12月15日 東京朝刊

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